映像作品公開のごあんない
今年もあと2か月となりました。
本番の高揚感や緊張感、そこに至る準備のプロセスを日常としていた、あのような時間が
遠ざかって行ってしまわないうちに、少しずつでも好転していくことを実感したいと願う今日この頃です。
ご縁を頂いて、通いはじめて6年目の今年、音楽を学ぶ学生さんの通う、音楽科のある総合大学は、
春から全て遠隔で、私は東京から授業をし、9月より一部の対面授業を再開しています。
このベートーヴェンイヤーの秋、ひとつの挑戦をいたしました。
宮城学院女子大学学芸学部音楽科
多重録音録画によるベートーヴェン「合唱幻想曲」
「今を、音楽と共に生きる」音楽を学ぶ学生たち 宮城・仙台からの挑戦~
http://www.mgu.ac.jp/main/departments/gakugei/mu/movie/
どうぞご高覧下さい。
密を避けた制約のある演奏環境の中で、試行錯誤とともに辿り着いた、学生の学びの成果を形にすること、
その瞬間に、出演者全ての音があるわけではなく、様々な組み合わせによって4日間の収録を重ねて、
ひとつのステージを作りました。
個人が家や音を出せる環境で録画を集めるというものではなく、殆どは同じ会場(大学講堂)での収録は、
面白い試みでもあったといえましょう。
対面による「レッスン」が音楽における教授の基盤でありながら、殆どはオンラインでしか伝える術を持たない。
しかしそのような中で、学生は音楽の中で自身と向き合い準備をし、音に、声にして
ステージで再会をしました。
素のままで、取り繕うこともない、その集められた音源をパッチワークのように、ミルフィーユのように重ねあわせた、
その音は、外したところはあっても、ひとりひとりの音楽そのもので、何よりも輝いて映ります。
これから続いていく若い人たちの音楽のシーンが、決して夢の無いものになってはならない、と、
この春、入学した学生の担任を初めて務めながら、その想いはますます強くなりました。
今できること、その役割を全うすること。その葛藤は直向きに学ぶ学生によって、
応えていきたいという活力に変わっていくのです。
同時に指揮者としての歩みの中で、この先どのようになっていくのだろうか、
日本のみならず、世界の音楽シーンは今後どのように育まれていくのだろうか。
切実です。自身はあと、幾つのステージを遺せるのだろうか。
いつものステージと同様、時間の中で結果を出す。その意味では変わらぬ部分もありつつ、
教育現場でもあるこの環境。テイクごとに換気や、衛生管理をしながら、
否、150を超すテイクは通常ではあり得ないのでしょう。
画像に写し出す私の指揮は、ロボットと然程変わらないのではないかと思いますが、
何かその平面から伝わっているものがお互いに高め合っていく「気」の一つに変わっていたならと願うものでした。
純粋に、この学生たちの存在を世の中に広めたい、とそう思います。
仙台の、この学舎の環境の良さと、そこに「音楽」があることを静かにアピールしていきたいと思います。
べートーヴェンの音楽はこのような状況にあっても、
常に側に寄り添って、共にありました。
作品と、そして全ての共演者との出会いに感謝をもって。
ご視聴いただけましたら幸いでございます。
みなさまの、安全とご健康をお祈りいたします。
船橋 洋介