山の上の教会
ベルリンフィルのチケットも取り損ない、シーズン開け間際のこの時期閑散としている中で何か無いかと探していたのだが、準・メルクル指揮によるMDR響(中部ドイツ放送交響楽団)と合唱団の旅公演があるのを見つけ、プチ旅行がてら出掛けてみる。まずベルリンから南へライプチヒへ特急で1時間強、隣に座ったドイツ人は日本オタクのようなプロのカメラマンで、笙を吹き雅楽を学びに頻繁に東京へ来るという人。鈍行に乗り換え1時間半。ツヴィッカウはシューマンの生まれた町ということでタクシーを飛ばし記念館と近くのSt.Mary教会に立ち寄る。さらにチェコの都市に向かう電車でおよそ30分山岳地帯の渓谷は美しい。山間の水と緑が織り成す景色を眺めながらAueという町に降り立つ。駅舎も無く廃墟のようなところ、不安に駆られつつ一台だけ停まっていたタクシーでおよそ6キロ、Schneebergというザクセン州の町へ向かった。石畳の通りを登って教会へ。歴史のある教会ながら大戦で焼け落ち再建された新しいドーム。お客さんは町の人たちが大半のようだったが会場を埋めつくした。シューベルトの未完成と、合唱付でシューマンの夜の歌、ミサ・サクラというプログラム。その染み渡る教会ならではのサウンドに心奪われる。残響をよく判ったバランスで終始誠実な音楽を運ぶ。オーケストラも合唱も秀悦。良い時間を過ごした。終演後マエストロに挨拶、ドイツと日本人のハーフという彼は穏やかな人だ。演奏者一行は3台のバスに乗って戻っていく中、広場に下って行き、日曜の夜、何もない辺りを散策しつつ、早く熱いシャワーを浴びたい一心でホテルを目指す。待ち行く人に場所を尋ねると指を刺して、「あれだよ」。登山感覚で再び細い路地を方角頼りに進める。小高い山から町と先程までいた教会が美しくそびえる。ホテルで夜景を眺めながらドイツ料理を頂く。ドイツにいる実感を持つ。こんな旅もなかなかいいものだ。(31日12:35)
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